雨の一夜 貞子のような女
雨の日のことだった。
その日は、一晩中雨が降っていた。
高校生だった俺は、次の日が休みということもあって夜更かしをしていたんだ。
夜中、喉が渇き、食堂の冷蔵庫を開けてみる。
飲み物が何もない。
くそ、コーラでも買いに行くか。
面倒だったけれど、喉の渇きには勝てずに、家の近所にある自動販売機まで行くことに。
雨の中、本当にめんどくさい。
時間は確か、深夜1時くらいだった。
傘をさして自動販売機まで行くと、自販機の横には傘もささずにずぶ濡れの女が1人、ぽつんと立っていた。
こんな真夜中に、たった一人傘もささずに立っているその女は、俺の目にはかなり不気味に映った。
なんだ、コイツ・・・・
気持ち悪い・・・・
女は、黒髪のロング、少しだけ薄汚れたような白いワンピースを着ていて、まるで「ホラー映画・リング」の貞子のようだった。
その貞子のような女は、下を向いて雨に濡れたままピクリとも動かない。
怖っ、さっさとコーラ買って帰ろう。
俺は、500ミリのコーラを1本買うと、足早に自宅に戻り施錠した。
ああ、怖えぇ。
不気味にもほどがある。
俺は、自宅に戻ると安心し、早速買ったばかりのコーラを飲みながら自室に戻った。
部屋に戻ると、1分もしないうちに部屋に置いてある電話の子機に内線電話がかかってきた。
時計は深夜1時15分をさしている。
両親は眠っていて、今家で起きているのは俺だけのはずだ。
内線は、食堂に置いてある親機からかかってきているものだった。
俺は、恐る恐る電話に出てみた。
「・・・・・・・はい、もしもし?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ガチャ・・・・・・・・・ツー・・・ツー・・・」
切れた。
でも、誰かが電話してきたこと間違いなさそうだった。
誰だ?
食堂には誰もいないはずだぞ。
もしかして、泥棒が入って、何かのはずみに間違えて電話機に触ってしまったとか?
俺は、あわてて食堂に向かった。
食堂に入り、電気をつけて隈なく見て回ったが、誰もいない。
さっきの内線電話は何だったのだろうか・・・・?
俺は、部屋に戻った。
そして、部屋の扉を開けてみて、絶叫した。。。。
部屋には、さっき自販機の横で見かけた貞子のような女がいたのだから・・・・
「うわあぁぁぁわぁあぁああーーーーーー!!!!」
恥ずかしながら、俺は尻餅をついてしまい、腰が抜けたかように手だけで這い蹲りながら、両親の寝ている部屋に向かった。
俺が、両親を起こすことなく、さっきの俺の叫び声を聞いた父さん母さんは、何事かとすぐに廊下に飛び出してきていた。
・・・・今見たことを、早口でざっと説明し、3人で俺の部屋を見に行く・・・・
部屋には、誰もいなかった。
先ほど見た貞子のような女は、完全に消えていた。
ただ、俺の部屋の中には、まるで雨が吹き込んだかのようにびっしょりと濡れていたのだった。
窓は開けていなかったのに。。。。
何も盗られていないことや、家中の鍵が壊されてもいないし開けられてもいないことから、警察へ通報することはなかった。
もし、通報してもおそらく無駄だろうということは、俺自身なんとなくわかっていた。
あの、貞子のような女は、おそらく人間ではないのだから・・・・
これは、高校のころの雨の一夜に体験した怖い話だ。
「雨の一夜 貞子のような女」終わり
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