警備員の怖い話・デパートの夜勤
これは、以前に某デパートで警備員の仕事をしていたAさんが体験したという怖い話。
そのデパートの警備員は24時間勤務。
仕事は毎日、とても忙しいものだった。
普段ほとんど日勤で働いていたAさんだったが、たまたまその日は夜勤に回された。
夜勤は以前やっていたことがあったのだが、昼夜逆転すると体調を崩しやすいため日勤に変えてもらっていたのだ。
だが、人手不足だからと頼まれると、どうにも断れない。
しぶしぶ、引き受けてしまったのだ。
しかも、普段必ず2人体制の夜勤の警備なのだが、その日はもう一人の警備員が高熱を出してしまいAさんは夜のデパートに一人きりになることになってしまった。
まあ、警備の仕事は慣れたもの。
夜に一人と言っても、怖がりではないからそれほど不安には思っていなかったという。
巡回の時間になり、懐中電灯を片手にいろいろ調べて回る。
ガスの元栓、ブレーカー。
巡回コースを見て回ったが、異常なしっと・・・
だが、その日はなんだか、どこからか人の視線のようなものを感じていた。
まあ、久しぶりの夜勤だし、今日は一人ということもあって、変に意識してしまっていることがあるのかもしれない。
Aさんは、それほど気にも留めなかった。
そして、2度目の巡回の時間。
またもや懐中電灯を片手に、デパート内を見て回るAさん。
ただ、ある場所に差し掛かったときに、どうにも嫌な感じがするのだ。
何と説明したら良いのか?
怖い夢を見たときの不安感とでも言おうか。
なんとも嫌な感じがする空間がある。
そういえば、1度目の巡回で感じた視線もここを通過したときから感じていた。
Aさんは、止めておけば良いのに、その辺りを念入りに調べてみることにした。
彼には、妙に仕事熱心で真面目な一面があったのだ。
そこは、デパートの婦人服売り場近くだったのだが、トイレに向かうための通路の暗闇で何か見えた気がした。
暗闇の中で、何かが動いたような?
Aさんは、その方向に向かってゆっくり歩き出す。
その空間自体嫌な靄のようなかかっている感じで、本当は怖かった。
それでも、近づくAさん。
懐中電灯を向けて目を凝らすと、確かに何かがいた。
それは、壁をゆっくりと登っている女だった。。。。
有り得ないことに、その女は壁を垂直に立ったまま歩行しているのだ。
ゆっくり、ゆっくり、壁を歩いて登る女・・・・
まるで、月面を歩いているかのようなスロー速度だったという。
あまりの光景に、腰を抜かすAさん。
恐怖で小さく悲鳴を上げてしまった。
「ヒィッ・・・・」
すると、その声を聞いたからか、女はピタリと立ち止まり、Aさんの方に体を向けた。
女の顔は、目がくり貫かれたように、ぽっかり穴が開いていたのだった。
もう、あまりの恐怖に、Aさんはその場を逃げ出してしまった・・・・
・・・・気がつくと、休憩室で震え続けていたという。
次の日の朝、同僚にその話をすると、以前働いていた男で、その壁を登る女の話をしていた者がいたというのだ。
その男は、壁を登る女を見てから、すぐに警備の仕事を辞めたのだとか。
なんでも、その男の場合、女に腕を掴まれて、引きずられたというのだ・・・・
あの女を見ているAさんからすれば、そんなことをされれば辞めて当然だと思ってしまった。
その後、Aさんは2度と夜勤は入れないようにしたという。
これは、あるデパートで実際に警備員が体験した怖い話である。
「警備員の怖い話・デパートの夜勤」終わり
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