前回→リゾートバイトの怖い話「失踪」
たった一部屋掃除するだけで、日給が2千円上乗せされることに、喜びしか感じていなかった二人。
はっきり言って、ラッキーだ。
現に、仕事自体とても楽なものだった。
オーナーとの約束通り、1人が使っていない部屋を掃除し、もう1人はドアを開けて廊下で待機する。
たったこれだけの仕事。
美咲さんとサキちゃんは、掃除と見張りを日替わりで交互に行った。
実際にやってみても、とても美味しい仕事内容だった。
どんなに忙しいときでも、この仕事をするときだけはオーナーもとても協力的なのだ。
何かオーナーに頼まれごとをされたときでも、
「あ、美咲ちゃんたち、これから×××号室の掃除に行くの?じゃあ、今のお願いキャンセルでいいよ。他の人にやってもらうから。美咲ちゃんとサキちゃんは、×××号室の掃除を優先的にやってね。」
と、やけに協力的で、助かっていたくらいだった。。。。
でも。
ある日のこと。
その日は、ホテル内がやけに混雑していて、人手が足りていなかった。
それでも、×××号室の清掃はしなくてはならない。
ころあいを見計らって、×××号室の清掃へと向かう美咲さんとサキちゃん。
その日の掃除は順番的に、サキちゃんだった。
サキちゃんが室内の清掃をしている間、美咲ちゃんは扉を開けて廊下で待機。
5分ほど経過しただろうか。
廊下にいた美咲さんは、お客さんに話しかけられた。
人手不足で、サービスがしっかりと回っていなかったのかもしれない。
お客さんからは、ちょっとしたクレームをもらい、美咲さんは神妙にそれを受け止め、サービス不足をひたすら謝っていた。
その間、×××号室の扉は閉めてしまっていた。
怒っているお客さんを前にして、清掃中の扉を開け放しにしているのは、失礼かと考えたのだった。
美咲さんにとって、、×××号室の扉を開けておくことが、そこまで大事なことだとも考えていなかったのだ。
彼女の対応の良さからか、お客さんの怒りはすぐにおさまり、部屋に戻っていった。
美咲さんは、お客さんの姿が見えなくなると、すぐに×××号室の扉を開けた。
あれ?
さっきまで、掃除機をかけていたサキちゃんの姿が見えない。
掃除機もろとも姿がない。
美咲さんは、室内に入り、洗面所やトイレなど見て回る。
しかし、サキちゃんの姿がないのだ。
部屋と外との出入り口は1つだけ。
その出入り口のすぐ外には、美咲さんが居たのだ。
サキちゃんが、この部屋の外に出たとは考えにくい。
必死で探すのだが、サキちゃんの姿は忽然と消えてしまっていた。
なに??
どういうこと?!?!
少しパニック気味になった美咲さんは、すぐに部屋を出てオーナーの元に向かった。
もしかすると、自分は大変なことをしてしまったのではなかろうか?
そんな気持ちが少なからず、芽生え始めていた。
オーナーを見つけると、今あった話をすべて聞かせた。
話を聞くたびに、顔面蒼白になっていくオーナー。。。。
最後には、少し震えてすらいた。
そして、搾り出すかのように呻いた。
「・・・・・・な、なんていうことだ・・・・・・・」
怖い、怖い!
いったい、どういうことなの?!
美咲さんとオーナーは、すぐに、×××号室に向かい扉を開ける。
そして、オーナーは
「いい?今度は、絶対に扉を閉めてはいけないよ。俺が中を見てくるから、君はここで待っていて!」
怒ったようにそう言うと、オーナーは、×××号室の中に入り、ひたすらサキちゃんを探して回った。
でも、サキちゃんは発見できず。
完全に、失踪してしまったのだった。
その後、警察は来るわ、美咲さんは事情聴取されるわで、大変なことになった。
でも、いろいろ調べた結果、なぜだか事件性はないという警察の判断から、サキちゃんの失踪は家出のような扱いになってしまったのだとか。
それから、数年経過した今でも、サキちゃんは発見されていないのだいう。
美咲さんは、涙ながらにこの話を話してくれた。
このホテルは未だに、運営しているのだとか。
リゾートバイトというシチュエーションが非常にリアルで、とても怖い話だ・・・・
<リゾートバイトの怖い話「失踪」>終わり
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