2013年8月27日火曜日

温泉旅館の異界

温泉旅館の異界・怪談・怖い話

これは、数年前に温泉旅館に泊まったときに体験した怪談であり怖い話だ。

一人旅が好きな俺は、群馬のとある温泉旅館に泊まった。

とてもよい場所で、町は良い所だし、旅館のサービスはいいし、温泉も申し分ないしで、満足のいくものであった。

夜になり、敷かれた布団に横になると、旅の疲れからかいつの間にか眠ってしまっていた。

・・・・どれくらい眠っただろうか。

ふと目が覚めた俺は、もう一度眠ろうと寝返りを打つ。

だが、今度は一向に眠れない。

3度目の寝返りを打ったときに、

「いいや、このまま起きてしまおう。」

と思い直す。

時計を見ると、深夜1時。

2時間ほど眠っていたらしい。

立ち上がり、部屋の電気をつける。

ん?

俺は、よく分からない違和感を覚えた。

部屋は先ほどと変わらないはずなのだけれど、どこか様子がおかしい気がする。

うまく説明できないけれど、おかしいのだ。

俺は、のどが渇いていることに気がつき、部屋の外の自動販売機までジュースを買いに行く。

部屋を出て廊下を歩いてみると、感じていた違和感はさらに強まった。

なんだ?なんだ?

廊下を歩いても、自販機が見当たらない。

それに、廊下の電気もやけに暗い。

あれ?

いくら歩いても、自販機がないな。

そのまま歩き続け、旅館のフロントまで来てしまった。

フロントには誰もいない。

電気もすべて消えている。

そういえば、まったく人の気配がないのが気になる。

従業員も皆眠ってしまったのだろうか?

暗い玄関口で、自販機を探していると、後ろから声がした。

振り返ってみると、10歳くらいの男の子がびっくりしたような顔でこちらを見ている。

ああ、人がいた。

良かった・・・・

でも、こんな深夜にこんな少年が何してるんだ。

俺が口を開く前に、男の子が話しかけてきた。

「お兄ちゃん。。。こんなところで何してるの?」

「え?のどが渇いたから、ジュースを買おうと。。。」

俺が話し終わらないうちに男の子は、会話を被せるように質問してくる。

「そういう意味じゃないよ。なんで、こんな場所に来たのかってこと!」

何を言ってるんだ、この子は?

「あのね、俺は自動販売機探してるんだよ。」

「違う違う。お兄ちゃんは、ここに来てはいけない人だよ。早く戻って!」

言っている意味が分からない。

男の子はなおも続ける。

「ねえ、ボク以外の者にまだ会ってない?」

「・・・え?あ、うん。起きてから、会ったのはキミが初めてだよ。」

「良かった。。。じゃあ、すぐに戻って。そうしないと、もう2度と戻れなくなるから。」

この子の言っている意味が分からない。


でも、俺はこの言葉を聞いて、正直ゾッとせずにはいられなかった。


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