前回→温泉旅館の異界・怪談・怖い話
この男の子は、俺をからかっているのか?
でも、真に迫っている。
男の子は、俺の手を握ると、階段のところまでついてきてくれた。
そして、
「いい?今すぐに、元いた場所に戻って。」
と言いながら、俺の手に小さな石を握らせた。
「こっちにいる間は、この石を離してはだめだからね。それじゃ、早く行って。」
そう俺をせかす。
意味が分からないけれど、男の子があまりに真剣なものだから、俺は言われたとおり、とりあえず部屋に戻ることにした。
ジュースは部屋からフロントに電話して手に入れてもいい。
なにより、さっきから付きまとっている謎の違和感と、今の少年の言動がリンクしてしまい、俺は少なからず恐怖を感じてきてしまっていたのだ。
階段を上がると、部屋に戻るために廊下を歩く。
すると、どこからか声が聞こえてきた。
「・・・・・・・・・おかしくないか・・・・・おかしくないか・・・・・・・・・何かが紛れ込んでいる・・・・・・・・・おかしくないか・・・・・・・・・おかしくないか・・・・・・・・・何かが紛れ込んでいる・・・・・・・・・」
低くて不気味な声。
そして、
「・・・・・・・・さがせ・・・・・・・・・・紛れ込んだ何かをさがせ・・・・・・・・・・・さがせ・・・・・・・・さがせ・・・・・・・紛れ込んだ何かを・・・・・・・ころせ・・・・・・・」
はっきりと聞こえた。
俺は見つかったら殺されるのか??
足が震えているのが分かる。
でも、立ち止まってはいられない。
走りたかったけれど、走れば足音が聞こえてしまうかもしれない。
俺は、男の子にもらった石を強く握り締めて、部屋に向かった。
・・・・・・・・やっとのことで部屋にたどり着いた俺は、布団の中にもぐると震え続けた。
怖い。。。。
怖い。。。。
誰か助けてくれ・・・・・・・・・
そして、いつの間にか気を失うように眠ってしまっていた。
明るい光で目が覚める。
朝?
戻れたのだろうか?
俺は、恐る恐るは部屋を出てみると、廊下には旅館のスタッフさんが働く姿が見えた。
ああ、戻れたんだ、と言う安心感の後に、「もしかして、あれは夢だったのではないか?」という疑問も湧いてきた。
うん、昨日のあれは夢だった可能性があるな。
俺は、部屋に戻り布団の上を見た。
すると、そこには昨晩男の子に貰った石が目に入ったのだった。
あれは夢ではなかったんだ。
俺は一体、どこに行ってしまっていたのだろうか?
あれは、異世界だったのだろうか?
よく分からない。
一つ言えることは、戻ってこられて良かった。
もしも、あの場所にい続けていたら、どうなってしまったことか。
その後の俺なりの解釈になるのだが、あの男の子がくれた石は、こっちの世界に戻るために必要なものだったのではないだろうか。
俺は、あの男の子に救われたのだと、今でも感謝している。
これはすべて、俺が実際に体験したゾッとする怪談であり怖い話だ。
「温泉旅館の異界・怪談・怖い話」終わり
引っ越しました:温泉旅館の異界2