2013年8月28日水曜日

温泉旅館の異界2

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この男の子は、俺をからかっているのか?

でも、真に迫っている。

男の子は、俺の手を握ると、階段のところまでついてきてくれた。

そして、

「いい?今すぐに、元いた場所に戻って。」

と言いながら、俺の手に小さな石を握らせた。

「こっちにいる間は、この石を離してはだめだからね。それじゃ、早く行って。」

そう俺をせかす。

意味が分からないけれど、男の子があまりに真剣なものだから、俺は言われたとおり、とりあえず部屋に戻ることにした。

ジュースは部屋からフロントに電話して手に入れてもいい。

なにより、さっきから付きまとっている謎の違和感と、今の少年の言動がリンクしてしまい、俺は少なからず恐怖を感じてきてしまっていたのだ。

階段を上がると、部屋に戻るために廊下を歩く。

すると、どこからか声が聞こえてきた。

「・・・・・・・・・おかしくないか・・・・・おかしくないか・・・・・・・・・何かが紛れ込んでいる・・・・・・・・・おかしくないか・・・・・・・・・おかしくないか・・・・・・・・・何かが紛れ込んでいる・・・・・・・・・」

低くて不気味な声。

そして、

「・・・・・・・・さがせ・・・・・・・・・・紛れ込んだ何かをさがせ・・・・・・・・・・・さがせ・・・・・・・・さがせ・・・・・・・紛れ込んだ何かを・・・・・・・ころせ・・・・・・・」


はっきりと聞こえた。

俺は見つかったら殺されるのか??


足が震えているのが分かる。


でも、立ち止まってはいられない。

走りたかったけれど、走れば足音が聞こえてしまうかもしれない。


俺は、男の子にもらった石を強く握り締めて、部屋に向かった。


・・・・・・・・やっとのことで部屋にたどり着いた俺は、布団の中にもぐると震え続けた。

怖い。。。。

怖い。。。。

誰か助けてくれ・・・・・・・・・

そして、いつの間にか気を失うように眠ってしまっていた。

明るい光で目が覚める。

朝?

戻れたのだろうか?

俺は、恐る恐るは部屋を出てみると、廊下には旅館のスタッフさんが働く姿が見えた。

ああ、戻れたんだ、と言う安心感の後に、「もしかして、あれは夢だったのではないか?」という疑問も湧いてきた。


うん、昨日のあれは夢だった可能性があるな。


俺は、部屋に戻り布団の上を見た。

すると、そこには昨晩男の子に貰った石が目に入ったのだった。


あれは夢ではなかったんだ。


俺は一体、どこに行ってしまっていたのだろうか?


あれは、異世界だったのだろうか?


よく分からない。


一つ言えることは、戻ってこられて良かった。


もしも、あの場所にい続けていたら、どうなってしまったことか。


その後の俺なりの解釈になるのだが、あの男の子がくれた石は、こっちの世界に戻るために必要なものだったのではないだろうか。


俺は、あの男の子に救われたのだと、今でも感謝している。


これはすべて、俺が実際に体験したゾッとする怪談であり怖い話だ。


温泉旅館の異界・怪談・怖い話」終わり

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